【 守るために知る・そして活かすために 】

山の管理を行うと必ず『変化』があります。その変化や実態をしっかり知り・向き合うことで、この先の里山保全や保護に繋げることができます。

一般社団法人森里では、活動場となる耕作放棄地の環境調査を行った上で管理を始め、その後も自動撮影カメラによる生態調査や鳥類調査等を実施しています。


< 痕跡調査 >

足跡や食痕、糞などの痕跡を手がかりに生き物の生息状況を読み解きます。(写真:タヌキの足跡)

< 自動撮影カメラ調査 >

その地にどんな生き物が生息しているのか、どんな行動をしているのか、管理前後の比較などを知るために調査地に自動撮影カメラを設置しています。



< 水生生物調査 >

管理した沢を利用している生物の調査のほかに、環境省がとりまとめる『全国水生生物調査』にも参加・協力しています。

< 鳥類調査 >

調査地を利用している鳥類の調査を実施しています。整備・管理による環境の変化や季節に伴って鳥類の利用に変化が現れるかを調べています。(写真:ヤマガラ)



< 巣箱調査 >

環境調査の結果、野生動物が利用できるような樹洞のほとんどない調査地では、大型巣箱の設置による巣箱利用調査も実施しています。(写真:ムササビ)

< 植生調査 >

調査地に生える植物についても調べ、特に生き物の利用に関与する植物などは整備の際に残すようにしています。(写真:サンショウの木とナミアゲハの幼虫)



= 学術調査の結果 =

調査地Aでは環境・痕跡調査の結果、神奈川県では準絶滅危惧種に指定される『カヤネズミ』(学名:Micromys minutus)の生息が確認されました。左写真のような高茎草を割いて編んだような球状の巣を作って繁殖します。かつては里山の草原環境で身近に見られたカヤネズミですが、開発や耕作放棄地の増加などにより、現在は国内の生息地域の約8割はレッドリストに入るほど希少な里山の生き物です。

 

類調査では『ヨタカ』(学名:Caprimulgus jotaka)の生息を確認することができました。夜行性で生息の確認が難しいヨタカは、神奈川県でも確認数も少なくほとんどデータがありません。調査地のような山間に開けた草原環境はヨタカの餌場として利用している可能性が高いと考え、調査を実施した結果、実際に渡りの時期に利用していることがわかりました。

(調査開始から2年連続で確認)

調査地に大型巣箱を設置したところ、樹洞を利用する『ムササビ』(学名:Petaurista Leucogenys)や『フクロウ』(学名:Strix uralensis)が訪れています。巣箱を設置してからわずか数日で偵察に訪れているため、環境調査でわかったように周辺の里山に樹洞木が少ないことが伺えます。

置した大型巣箱を2024年春には2ペアのフクロウが繁殖のために利用し、巣箱Ⅰでは1羽、巣箱Ⅳでは2羽の雛が無事巣立ちました。また巣立ち前のフクロウの雛に環境省の足環を装着し、今後の環境保全に役立てるための貴重なデータを得ました。これらの情報を活かして、この先もフクロウが生息できるような里山環境の再生・保全に取り組んでいきます。

境省の足環を装着して放鳥された鳥類が再捕獲・自動撮影カメラにて確認されています。留鳥は放鳥後も調査地周辺で生息していること、渡鳥は再び調査地を利用していることがわかりました。このような結果から、調査地は今後も残すべき貴重な環境であることがわかり、標識調査を実施する重要性も高まりました。

【 確認情報 2024年12月現在 】

アオジ(2AP-20974) 初放鳥:2022年4月22日(♀A) 再確認:2023年3月10日 確認方法:標識調査

ヤマガラ(リングNo.不明) 初放鳥:不明 再確認:2023年10月30日 確認方法:自動撮影カメラ

アオジ(2AP-87064) 初放鳥:2023年3月10日(♀A) 再確認:2023年11月21日 確認方法:標識調査

シロハラ(リングNo.不明) 初放鳥:2022年4月または12月 再確認:2023年12月10日以降 複数回 確認方法:自動撮影カメラ

ヤマガラ(2AP-87186) 初放鳥:2023年9月29日 再確認2024年2月10日 確認方法:標識調査

ウグイス(1J-78808) 初放鳥:2023年3月10日(♀A) 再確認:2024年2月10日 確認方法:標識調査

ウグイス(1J-78704) 初放鳥:2022年12月9日(♀A) 再確認:2024年2月10日 確認方法:標識調査→標識後1年以上経過個体

キビタキ(1J-78822) 初放鳥:2023年6月13日(♀A) 再確認:2024年4月25日 確認方法:標識調査→1年越し再飛来

ヒヨドリ(5F-02128) 初放鳥:2022年8月12日(♀A) 再確認:2024年5月17日 確認方法:標識調査→標識後約2年経過個体

ヤマガラ(2AP-87189) 初放鳥:2023年9月29日(♂A) 再確認:2024年5月24日 確認方法:標識調査

シジュウカラ(2AP-87184) 初放鳥:2023年9月29日(♂1W) 再確認:2024年5月24日 確認方法:標識調査

キビタキ(1J-78822) 初放鳥:2023年6月13日(♀A) 再確認:2024年6月4日 確認方法:標識調査→同季2回目の確認

キビタキ(1K-36106) 初放鳥:2024年5月24日(♀A) 再確認:2024年6月12日 確認方法:標識調査

シジュウカラ(2AP-87067) 初放鳥:2023年3月10日(♀1W) 再確認:2024年6月12日 確認方法:標識調査

シジュウカラ(2AP-87066) 初放鳥:2023年3月10日(♂1W) 再確認:2024年6月12日 確認方法:標識調査

ガビチョウ(5F-12524) 初放鳥:2023年1月13日(U1W)海老名市小町門沢橋 再確認:2024年7月19日厚木市七沢調査地A

→海老名市で標識後半年で約13キロ移動していたことがわかった

キセキレイ(2AS-31418) 初放鳥:10月15日(UA) 再確認:2024年11月27日 確認方法:自動撮影カメラ

アオジ(2AR-64067) 初放鳥:2024年2月10日(♀1W) 再確認:2024年12月13日 確認方法:標識調査

アオジ(2AR-64063) 初放鳥:2024年2月10日(♀1W) 再確認:2024年12月13日 確認方法:標識調査

アオジ(2AP-21191) 初放鳥:2022年12月9日(♀A) 再確認:2024年12月13日 確認方法:標識調査→標識後2年以上経過個体